住宅購入の際に欠かせない制度が住宅ローン減税です。ローン残高に対して一定期間所得税(控除しきれない場合は住民税)が控除される制度です。
住宅ローン減税には様々な要件があるのですが、中古住宅を検討する際に関係するのが築後年数要件という建物の築年数の要件です。
住宅ローン減税の築後年数要件 |
住宅ローン減税における築後年数要件は下記になります。
築後年数要件に抵触する物件は住宅ローン減税が利用できないというわけではなく、築後年数要件を緩和する対策が用意されています。
ポイントは「耐震」です。
耐震性に優れた建物を取得した場合は、築何年でも住宅ローン減税の対象にしましょう、という考え方になります。
築年数が古い住宅で住宅ローン減税を利用するための方法 |
築後年数要件を緩和する現実的な方法は3つです。これらの方法は税制改正とともに後付けで追加されたもので、追加された経緯と理由を理解しないと判断を誤ってしまいます。
いずれの方法でも「築後年数要件を緩和する方法は所有権移転までにやっておかなければならないことがあります」
築後年数要件を緩和するポイントは「耐震」です。家屋の耐震性を証明する書類を耐震基準適合証明書と言います。建築士事務所に所属する建築士などが発行します。
耐震基準適合証明書付きの物件、つまり耐震性が確認された物件を取得する場合には築何年でも住宅ローン減税の対象にしましょう、という考え方です。
※住宅性能評価書など耐震性を証明する書類は他にもありますが、ここでは割愛します。
耐震基準適合証明書を発行するには耐震診断が必要です。耐震診断の結果、基準を満たさない場合は耐震改修工事が必要になります。
耐震改修工事が必要ない場合は、所有権移転までに耐震基準適合証明書を発行しなければならない、ということになります。
既存住宅売買瑕疵保険という制度があります。(詳細はこちら)既存住宅売買瑕疵保険に加入すると発行される付保証明書があれば、築後年数要件を緩和することができます。
既存住宅売買瑕疵保険に加入するには専門の建築士による検査に合格する必要があります。既存住宅売買瑕疵保険の検査基準は大きく分けると「耐震」と「劣化」です。
つまり、既存住宅売買瑕疵保険に加入できる物件は、耐震性が確保された住宅とみなし、築何年でも住宅ローン減税の対象にしましょう、という考え方です。
既存住宅売買瑕疵保険の場合でも、検査不適合の場合は改修工事が必要になります。また、既存住宅売買瑕疵保険の手続きは所有権移転までに行わなければならないことがあります。
※※従来の方法には問題点がありました※※
上記二つの方法には実際の取引にそぐわない問題点がありました。改修工事です。 ■売主が売却のために工事を行う場合
まず考えられるのが売主が売却のために必要な改修工事を行うことです。不動産取引形態から売主は個人の場合と宅建業者の場合に分かれます。
■買主が所有権移転前に工事を行う場合
所有権移転までに買主が手配して必要な改修工事を行うという考え方もできます。ただ、所有権移転前の工事は不動産取引のトラブルの原因となるので、あまり一般的ではありません。 |
所有権移転前に改修工事を行うことが現実的でなかったため、所有権移転後に耐震改修工事を行った場合は、住宅ローン減税の対象にしましょう、という制度が後付けされました。
所有権移転前に耐震基準適合証明の仮申請を行い、所有権移転後、居住開始までに改修工事を行って、耐震基準適合証明書を発行する、それが要件となります。
ポイントは3つです。
一つ目は所有権移転前に仮申請を行うということです。仮申請書を受理する建築士と耐震基準適合証明書を発行する建築士は同一となるため、所有権移転までに改修工事を経て証明書を発行するまでの全工程を決めておく必要があるとも言えます。
二つ目は耐震改修工事が前提となることです。3つ目の方法は所有権移転までに改修工事を実施することが現実的でないから追加されたルールです。耐震改修工事が不要の場合は所有権移転までに証明書を発行する必要があります。
決して耐震基準適合証明書が所有権移転後の発行でも良いとなった訳ではないので注意が必要です。
三つ目は居住開始までに工事を行うという点です。所有権移転登記は本来は旧住所で所有権移転登記を行い、住民票を移転して、住所変更登記を行う、という流れになります。所有権移転に当たって、予め住民票を移しておくことで、住所変更登記を省略する慣習を「新住所登記」と呼びます。新住所登記は一般によく行われる業界の慣習です。
問題は、この新住所登記を行うと制度の要件から外れてしまうという点です。
住宅ローン減税を利用するための不動産取引の進め方 |
中古住宅取引で住宅ローン減税を確実に利用するために不可欠な要素は、制度に精通した仲介会社を選択することです。
もう一点、なるべく早いタイミングで建築士によるインスペクションを実施することです。
築後年数要件を緩和する方法について説明しましたが、実際の不動産取引で適切に運用するのは難しい判断が求められます。制度に精通し、かつ建物性能に詳しい人が取引をコントロールしないと上手くいきません。
インスペクションが必要なのは、インスペクションを実施しないと改修工事が必要なのか、どこを直さなければならないのか、改修工事にいくらかかるのか、など判断に必要な重要な情報が得られないからです。
買主にとってはインスペクションのタイミングは早ければ早い方が良いのですが、実際の取引では売買契約を急がなければならない場面も考えられます。だからこそ、制度に精通した仲介会社とよく相談して、インスペクションの実施時期を判断しなければなりません。